Sさんの沢入りのスタイルは、水をジャブジャブ、といったものではなく、極力高巻きで進み、源流部を詰めて尾根に這い上がり、そして尾根筋を外さず下るといったオーソドックスなもの。そのスタイルで奥多摩や丹沢の沢を結構数多く歩いている。
で、今回どこに行くかはSさんにお任せ。その中から選んだものが川乗谷・逆川であった。この沢はSさんが最初に入った沢とのことである。
ルーティングは奥多摩駅からバスで川乗橋に。そこから林道を30分程度歩き川乗谷に逆川が出合う辺りで入渓。そこから逆川をウスバ林道まで遡上し、林道・作業道をウスバ乗越経由で下り川乗橋まで戻る、といったもの。入渓点からウスバ林道の比高差は400mほど。まさに「谷を突き上げる」といったものである。 遡行時間も休憩を入れると4時間弱。沢に沿って林道・登山道のある沢に入り、いつでもエスケープする「なんちゃって沢登り」を楽しむ我が身には、シダクラ沢以来の苦行を覚悟していたのだが、尾根への這い上がりもなく、遡行時間の長さはそれなりに大変ではあったが、久しぶりにオーソドックスな沢登りを楽しんだ。
本日のルート;奥多摩駅>川乗橋バス停>林道を入渓下降点に>入渓>逆川出合に>2段10m大滝>大岩のゴーロ>2条4m滝>釜のある3m滝>ゴルジュ帯>釜のある2条滝>4mナメ状の滝>荒れた渓相のゴーロ>5mナメ滝>2条4m滝>右岸から枝沢が合流>釜のある2m滝>3m滝>ナメと小滝が続く>二股>数段のナメ状の滝>大ダワ出合>小滝が続く>2条2m小滝>釜のある3m滝>数段からなるナメ状の小滝>2m小滝>2条2段3mの小滝>2段3m小滝>4m小滝>3mナメ滝>山葵田跡>トイ状の3段10m滝>3m滝>10m滝>ウスバ林道>ウスバ林道から作業道に乗り換え>ウスバ乗越の尾根道先端へ>作業道を川乗林道・竜王橋まで下る>川乗林道を川乗橋バス停へ>川乗橋バス停
奥多摩駅;8時21分
奥多摩駅発8時35分のバスに乗りましょう、とのSさんからの連絡。始発から行動する山屋さんたちにはあたりまえの行動時間ではあろうが、こんなに早く動くのは久しぶり。6時台に起き、6時59分三鷹発のホリデー快速おくたま1号に乗り奥多摩駅に8時21分に到着
●PART 1;川乗橋バス停から入渓点まで; バス堤>林道から川乗本谷下降点>入渓 おおよそ1時間
川乗橋バス停;8時48分
8時35分発の東日原行に乗り、8時48分に川乗り橋バス停で下車。数組が下車。倉沢の沢登りに行くときなど、川乗橋で川乗(川苔)山に登る人が大挙下車するのだが、なんだか様子が違う。バス停横の案内に「百尋ノ滝(ひゃくひろのたき)」から川乗山への間が通行止め(2015年8月1日)となっていた。スズメバチの巣がその因である、と。そのためとは思えないが、真夏の山はそんなものなのだろうか。
林道を入渓下降点に;9時13分(標高565m)
施錠された柵の脇から林道に入る。舗装された林道を川乗本谷に沿って進む。歩くこと30分、逆川が川乗本谷に合流する辺りに到着。逆川出合い手前あたりの林道で入渓準備しているパーティがある。
少し先に進み、川乗本谷に下る適当な箇所を探すと、逆川出合い辺りのカーブミラーのある辺りから谷に下る踏み跡があった。
入渓;9時50分(標高552m)
踏み跡を谷に下るが、すぐに崖で行き止まり。左右を見廻しトラバース気味に出合いの少し上流点へと慎重に下る。ロープをだそうかと思ったくらいの、結構難儀な下降であった。
結局谷に下り切るまで15分程度かかったかと思う。で、入渓準備をして入渓したのは9時50分頃になっていた。
●PART 2 入渓から2段10m滝まで; 入渓>逆川出合>逆川遡上開始>2段10m滝 約30分(比高差23m)
逆川出合に;10時8分(標高543m)
入渓地点をガーミンのGPSに入れた地図で確認すると、逆川出合いの少し上流箇所になっている。出合いに向かって少し下るが、大岩が転がり、簡単には進ませてくれない。大岩から飛び降りるには水深が浅すぎる。結局、岩の突起部にロープをかけ8環をセットし、丸まった大岩を懸垂下降で下りることにした。出合い箇所まで15分弱かかってしまった。
出合いから2段10m滝まで
大岩の転がる逆川出合から遡上を開始。苔むした小滝、滑気味の小滝を15分程度登ると眼前に大きな滝が見えてきた。
2段10m大滝;10時20分(標高575m)
滝に近づくと、先行パーティが右岸、左岸を高巻きしている。両パーティもビレイで確保しながら結構慎重に高巻きしている。滝は7m+3mの2段の滝のようである。登れないこともないようだが、我々は、シャワークライムを楽しみ、結果水に濡れることなど勘弁と、迷うことなく高巻きとする。
右岸・左岸を見るに、左岸にほうが少し簡単そうに見える。左岸の先行パーティも大分先に進んだので、我々も高巻き開始。おおよそ10時30分過ぎから崖を這い上がり、滝に向かって一直線に落ち込む箇所を慎重にトラバース。ロープも出さずトラバースしたが、足場も悪く、ロープで安全確保すべき箇所ではあった。後から反省。
●PART 3 ゴーロ帯からゴルジュ帯; 大岩のゴーロ>2条4m滝>3m滝 約10分(比高差13m)
大岩のゴーロ;10時50分(標高610m)
高巻きのピーク地点の標高が604mほどであったので、2段10m滝の上にある3mの滝も巻いていた。結構高く巻いたようだ。高巻に10分ほどかかっただろか、2段10m滝の高巻きから沢に戻ると大岩のゴーロ地帯が現れる。
2条4m滝;10時52分
ゴーロを進むとCS2条4m滝が現れる。釜も深そう。ここも迷うことなく巻く。因みに、CSとは「チョックストーン(chockstone)=岩の割れ目にがっちり挟まった岩」を意味する。
釜のある3m滝;10時57分(標高619m)
その直ぐ先にも釜をもつ3mほどの滝、この釜も深そう。ここも高巻きで進む。
●PART 4 ゴルジュ帯からゴーロに; 小滝の続く岩場から荒れた渓相のゴーロに;約30分(比高差70m)
ゴルジュ帯;11時(標高622m)
釜を持つ3mの滝を越えるとゴルジュ、と言うか、狭隘な谷に挟まれ大岩から流れ落ちる水線を這い上がる。小滝というより岩を避けて流れ落ちる水流といった風情。幾つもの大岩の右や左から流れ落ちる水線中を這い上がる。いかにも沢を突き上げている感がある。
釜のある2条3m滝:11時16分(標高646m)
15分ほど沢を突き上げると、釜をもつ2条3mの滝。ここの釜は浅そうであり、右岸を這い上がる
4mナメ状の滝;11時31分(標高680m)
釜を持つ滝を越え、10分ほど進むと4mほどのナメ条の滝
荒れた渓相のゴーロ;11時32分(標高684m)
ナメ条の滝を越えると、比高差のある沢は一時「お休み」。平坦なゴーロに出る。
●PART 5 ゴーロから再びゴルジュ帯を抜ける; 5mナメ滝>2条4m滝>右岸から枝沢が合流>釜のある3m滝>浅い釜の3m滝 約15分(比高差約25m)
5mナメ滝;11時36分(標高695m)
ゴーロの先は再び比高差のある岩の左右を水が流れ落ちるゴルジュ地帯となる。2,3m程度の滝を這い上がると、5mほどのナメ滝。美しい渓相である。
2条4m滝;11時39分
その先に2条に分かれたナメ風の滝。4mほどあるだろうか。この辺りも最初のゴルジュ帯のように大岩の左右を下る水線を這い上がることになる。
右岸から枝沢が滝となって合流;11時40分
2条4m滝を這い上がった先に、右岸から枝沢が合わさる。枝沢は5mほどの滝状となって逆川に注ぐ。
大きい釜のある2m滝;11時41分
枝沢が合わさる直ぐ先には、深い釜をもつ滝。右岸を巻く。
ナメ滝とゴルジュ出口の3m滝;11時45分(標高708m)
少しナメ状の滝を這い上がるとその先に浅い釜をもつ滝。3m程だろうか。釜が浅いので右岸を這い上がる。ここでゴルジュ帯は終わる。
●PART 6 ゴルジュ帯出口から二股まで; 再びナメと小滝の連続のゴルジュ帯を抜ける 約30分(比高差約80m弱)
ナメ(12時2分;標高716m)と数段のナメ状の小滝(12時14分)
3m滝を這い上がると少し荒れた渓相(11時56分)。それも直ぐ終わり、緩やかなナメ、数段に分かれたナメ状の滝など、いくつもの滝、と言うか岩を覆って流れ落ちる水線を登る。
二股;12時22分(標高780m)
数段に分かれたナメ状の滝の後も風情の異なる2m程の滝が続いた後、左岸から涸沢が合流する。当初はここが大ダワ出合かと思ったのだが、地図で確認すると大ダワ出合いでは滝条となって逆川に合わさっているようであり、取り敢えず「二股」と記す。30分ほどで比高差80mほどを突上げた。ここで15分ほど小休止。
●PART 7 二股から大ダワ出合へ: 小滝とナメ滝を進み大ダワ出合 約10分強(比高差約20m強)
数段のナメ状の滝;12時45分
二股でお昼を取り、12時40分前に出発。二股を離れほどなく数段からなる滝を登る。下段はナメ状、その先は2mほどの小滝。ナメは水線上を、小滝は右岸を上る。
大ダワ出合前の滑滝;12時49分
先に進むと一枚岩のナメ状の滝。大岩の間を流れ落ちる小滝が多いこの沢で、印象に残る滝のひとつであった。
大ダワ出合;12時50分(標高803m)
大ダワ出合で、逆川本流を確認。5m滝となって逆川注ぐのが大ダワ沢であるので左手に進む。
●PART 8 大ダワ出合いから釜のある3m滝へ: 小滝が続く>釜のある滝>小滝が続く>釜のある3mナメ滝 約20分強(比高差約40m強)
小滝;13時4分
大ダワ出合で本流を確認し逆川を進む。10分ほどでナメ状の滝。
2m小滝;13時7分
ナメ滝の先に2mほどの小滝。簡単に這い上がる。
2条2m小滝;13時10分
その先の2条2m滝も中央部を這い上がる。難しいことはなにもない。
釜のある3m滝;13時13分(標高844m)
その先には深そうな釜をもつ滝。ここも迷うことなく高巻き。結構高く巻き水線に下りる。
●PART 9 釜のある滝から山葵田跡に; 小滝が続く>3mナメ滝>山葵田跡 約30分(比高差70m)
数段からなるナメ状の小滝:13時16分
数段からなるナメ状の滝の水線上を進み高度を上げる。この辺りも沢の突き上げ感が強い。
2m小滝;13時17分
2mほどの小滝は右岸を這い上がる。若干ステミング気味に上る。
2条2段3mの小滝;13時19分
小滝を越えると2条に水流が分かれた数段からなる小滝。水線上を進む。
2段3m小滝;13時22分
その先に2段3mほどの小滝。滝と言うか、急峻な岩場を水が岩と岩の間や、岩の上を流れ落ちている、といった感がある。
4m小滝;13時25分
トイ状というほどではないが、岩の窪みを一筋の流れとなって下る姿はなかなか、いい。
3mナメ滝;13時25分
岩場を数条と言うか、縦横無尽に流れ落ちるナメ状の滝の風情もなかなか、いい。
山葵田跡;13時44分(標高917m)
3mのナメ滝を越えて10分ほど進むと突き上げていた谷が開け、そこの左岸に山葵田跡の石組が残っていた。右岸高巻した釜のある滝あたりからここまで、比高差70mを30分程度で登ることになる。
●PART 10 山葵田跡からウスバ林道に: 2段10mトイ状の滝>3m滝>10m滝>ウスバ林道 15分(比高差約35m)
トイ状の3段10m滝・左岸高巻き;13時46分(標高928m)
山葵田を越えると3段の10m滝。ここも左岸を大きく巻く。崖を直登気味に這い上がり、前のパーティより高く巻きトイ状の滝をクリア。
3m滝;13時48分(標高930m)
トイ状の滝をクリアした先に4m滝。釜を避けて巻いて進む。
10m滝;13時51分(標高948m)
ウスバ林道手前に10mの大滝。なかなか迫力のある此の滝が、今回の最終地点。直登を試みるパーティもいたが、我々は右岸の崖を這い上がり、ウスバ林道に。
ウスバ林道;13時59分(標高955m)
林道に這い上がり、本日の逆川沢登りを終える。沢靴から登山靴に履き替え下山準備。服は濡れて水を含み重くなったものを背負うことを避け、また歩いているうちに乾くかもと、そのままの格好で下山することに。
●PART 11 ウスバ林道からウスバ乗越の尾根を巻く作業道に乗り換え、竜王橋まで下り林道を川乗橋バス停へ: ;10m滝上のウスバ林道>ウスバ林道から作業道に乗り換え>ウスバ乗越の尾根道先端へ>作業道を竜王橋まで下る>川乗林道を川乗橋バス停へ およそ1時間20分強
10m滝上のウスバ林道出発;14時15分(標高951m)
10m滝を直登する若者のパーティなどを眺めながら、下山準備と大休止。14時15分頃、ウスバ林道を下山開始。960mから970mの等高線にそって山腹をトラバース。南に突き出た尾根を廻り込んだあたりから等高線980、990mと少し上り、等高線1000m辺りで「ウスバ乗越・川乗山」の標識。
ウスバ乗越・川乗山には、ここを右に折れるとある。が、左手にきれいに整備された作業道が尾根を巻いて進んでいる。ウスバ乗越経由の尾根道をパスし、作業道をそのまま進むことに。
ウスバ林道から作業道に乗り換え;14時31分(標高1005m)
ウスバ乗越の尾根を巻く作業道を進む。等高線を1000、990、980、970mと下げ気味に尾根を巻き、等高線960m付近で「ウスバ乗越」の尾根筋にあたる。 このあたりから雷が聞こえる。まだ結構遠そうだ。雨は降ってはいないので、急ぎ下山。
ウスバ乗越の尾根道先端へ;14時45分(標高928m)
平坦となった尾根筋を下り、等高線930m付近で平坦な尾根筋は終了。そこから先は急坂となる。作業道は踏み跡が明瞭であり、迷うことはないだろう。
作業道を川乗林道・竜王橋まで下る;15時6分(標高611m)
ウスバ乗越の平坦地が切れた先は30分で標高300mほど下ることになる。急坂ではあるが、ジグザグ道となっており、急峻な坂を下りる、といった印象はない。
作業道は踏み跡に沿っを下りればいいのだが、一箇所間違いそうな分岐がある。そこはほぼ作業道を降り切った、竜王橋のすぐ手前。作業道を下りるとT字路となり、道が左右に通る。竜王橋は右手に折れる。左に進めば逆川に沿ってすすむことになる。T字路から右に折れるとほどなく川乗林道が見え、竜王橋の橋詰に下りる。
川乗林道を川乗橋バス停へ;15時37分(標高410m)
竜王橋から川乗林道を進み、逆川出合(5時13分)で林道から川乗谷への下降地点を見やりながら30分ほど歩くと川乗橋バス停に到着。雨もパラパラ。 15時5分のバスは出ており、次は16時26分。1時間近く着替えをしながら、のんびりと、バス停のささやかな「屋根」下の木椅子に座りバスを待つ。
逆川の所感
10m級の大滝が2つ、鎌を持つ滝も多数。その間は小滝が随所に現れ、バリエーション豊か。経験者は大滝を直登できるし、釜を「へつり」で進めばいいだろうし、初心者とか水に濡れるのを避けたい方は高巻きすればいい。
もっとも、大きく高巻きする2か所は、我々はロープも出さずトラバースしたが、少し危険ではあるので、ロープで安全確保をすべきではあった、と思う。
2.遡行終了地点のウスバ林道からの戻りのルート・バリエーションが豊富
第一に、ウスバ林道を下り1時間20分ほどでバス停に到着できるのがいい。休憩も含めて4時間程の遡行時間の後、尾根に這い上がるのは結構厳しいが、この沢はおおよその方が終了点とする10m大滝の直ぐ上にウスバ林道があり、作業道と組み合わすと、ほとんど登りなしで川乗林道まで下ることができるのが嬉しい。
また、時間に合わせて川乗山経由で川乗林道に下りるもよし、川乗山から奥多摩方面へのいくつかの下山道を選択するもよし。時間に合わせ、戻りのルートが選択肢がいくつもある。
3.オーソドックスな沢登りを手軽に楽しみたい方にお勧め
最近の沢登りは、沢に沿って林道が通り、いつでもエスケープできる倉沢本谷とか水根沢などに行くことが多いのだが、3時間で比高差400mほどを突き上げるこの沢は、久しぶりにオーソドックスな沢登りを楽しんだ感がある。
途中エスケープルートはなく、少なくともウスバ林道までは沢を詰めなければならないが、源流点近くまで詰め上げた遡行終了点からは小川谷のコツ谷や、シダクラ沢で体験したように、急登を尾根に這い上がることもなく、上でメモしたように林道・作業道を尾根を巻き、そして尾根筋を下ることができる。最近多かった沢と林道がペアとなった、所謂「スポーツ沢登り」とは違ったオーソドックスな沢登りが、それほどの難儀もなく楽しめる。
0 件のコメント:
コメントを投稿